プレーヤーの内面的な希望を満たしつつ「#軌道を制す」

自分好みの打球感と、ストリング自体の性能特性とでキャスティング

ダンロップの新しいストリング群、みなさん興味ありますよね?

前回は強烈なインパクトを実現するプレーヤーのために開発されたポリエステル系4モデル【エクスプロッシブ】シリーズについて説明しましたが、今回は、強靭な物性のポリエステル系とは真逆の「柔らかさ」「マイルドさ」を持ち味とするマルチフィラメント系シリーズ【アイコニック】についてお話ししましょう。

ダンロップの「柔らかさ」をイメージ、だから「象徴=ICONIC(アイコニック)」

ICONIC(アイコニック)

ダンロップの新ストリングと初めて対面した方はきっと、「アイコニックって、聞き慣れない言葉だな」と思われたと思いますが、ダンロップというブランドが長年大切にしてきた「ブランドイメージ」から生まれた名称です。1984年、ダンロップは【MAX200G】というラケットを発売します。当時は木製フレームからカーボンへの過渡期で、「カーボン製は打球感が硬くてイヤだぁ!」という「柔らかい打球感大好きプレーヤー」が、こぞってこれを使ったことで世界的に大ヒットした伝説のモデル。以降、日本のダンロップは「柔らかさ」「マイルドさ」をブランドイメージとして守り続けてきました。

MAX200G

ですから、ダンロップにとって「柔らかさ」「マイルドさ」こそ、『ザ・ダンロップ』なんです。そんなフィーリングを感じさせてくれるから……【ICONIC=象徴的な】。

マルチフィラメント系シンセティックは、素材的にはポリアミド(一般的にナイロンと呼ばれる)を材料とした極細繊維をたくさん束ね、ポリウレタン等の柔らかい樹脂でまとめ、耐久性を持たせるために表面をコーティング層で覆った構造でできています。

アイコニック・タッチアイコニック・オールアイコニック・スピード

【アイコニック】シリーズは、極細繊維の組み合わせや樹脂の使い方によって、3種の個性を与えられました。マルチフィラメントを好まれる方は、どうしても「打球感が柔らかいのがいちばんいい!」と思いがちですが、それだけじゃないんです。もしかしたらそれは「あなたの思い込み」で、もしかしたらもっと自分にフィットするマルチがあるかもしれません……。

ソフトへもスピードへも「振り幅の大きさ」に注目だ

ストリング分野への新規参入で存在感をアピールするには『強い個性』が必要です。これまである「アレと同じ」では、乗り換えを促すことなどできません。そこにこそ【アイコニック】の意味がありました。3種のうちもっとも柔らかい【アイコニック・タッチ】は、とてもマイルドな打球感で、ストリング面の球乗り時間が非常に長い。それを示すのが「打ち出し角 最大7%アップ」という打球軌道です。ボールを包むように接触するインパクトは、一般的に柔らかいとされるマルチよりも、さらに上方へ持ち上げるように打ち出してくれます。

アイコニック・タッチ軌道

フルスイングでエースを狙うスタイルではなく、高い弾道で、相手コートの奥深くへコントロールし続けるタイプのあなたに向いています。歯を食いしばり、めいっぱいリキんでボールをシバキ続けるのではなく、楽に打ちながら相手を攻略するのです。この「楽さ」において、これまでのマルチの枠を振り切った個性を持っているといえます。

そして対照的なマルチフィラメントが【アイコニック・スピード】です。マルチの打球感は好きなんだけど、それなりに速い打球も打ち込むしなぁ?というプレーヤーは、打ち出し角が低めに飛び出して、時間的に早く相手へ到達するボールを打てる【アイコニック・スピード】が向いています。

アイコニック・スピード軌道

「けっこう打つよねぇ!」と言われるプレーヤーでも、マルチが好きな人はたくさんいますし、プロでもマルチ愛好者はたくさん存在します。そしてこの【アイコニック・スピード】は「スピン量が増す」という結果も生み出します。

中身はマイルドなマルチでも、それを覆うコーティング層に硬い素材を使っているため、縦と横のストリング同士の滑りがよく、スナップバック効果が表われやすく、スピンの量が増えるのです。ダンロップマルチの中でも、推進力とスピン量がバランスよく発揮されるアイテムではないでしょうか。

軽く打ち合っているときは“しっかり者”のシャキッと感があるけれど、強いインパクトに対しては“優しくなる”。そんな感じが【アイコニック・スピード】で、どんな場面でも人当たりよくソツなくこなしちゃうのが【アイコニック・オール】って考えてもらうと、ダンロップのマルチはわかりやすいと思いますよ。

アイコニック・オール軌道

ダンロップマルチ3種の中では【アイコニック・オール】はスタンダードマルチです。マイルドさとパワーのバランスが調和するパフォーマンスは、高反発系フレームでは「スピードを保ちながらマイルドさを得たい」ときに。またコントロール系フレームでは「手に伝わるインパクト情報を優しく確実に得たい」というプレーヤーにフィットするでしょう。

アイコニック性能表

最後に、筆者からの提案があります。3つのダンロップマルチのうち、少なくとも「2モデル」を使ってみてください。3つすべてを試す必要はないと思います。とても柔らかいのが好きならば、【アイコニック・タッチ】と【アイコニック・オール】。柔らかいのが好きだけど、けっこう打つよ!という人は【アイコニック・オール】と【アイコニック・スピード】を使い較べてください。

アイコニック・タッチアイコニック・オールアイコニック・スピード

そしてラリーの様子を、友達やコーチに見てもらうんです。思い込みだけで選ぶのではなく、選択肢の枠を広げてみてください。実際に使い較べてみると、自分が思っていたのじゃないほうがいいってことはあるものです。それを試すには、ダンロップマルチ3種は最適だと思います。

松尾高司
松尾高司氏

おそらく世界で唯一のテニス道具専門のライター&プランナー。
「厚ラケ」「黄金スペック」の命名者でもある。
テニスアイテムを評価し記事などを書くとともに、
商品開発やさまざまな企画に携わってきたプロフェッショナル。