2021/02/26

D-Cafeレポート

《D-cafeスペシャルインタビュー》畑岡 奈紗 「今シーズンは絶対優勝。去年の分も合わせて2勝したい」

「勝てなかったのは本当に悔しかったし、やはりいちばん印象深いですね」
 畑岡 奈紗が自身の2020年を振り返ってそう語るのが、1月中旬に行なわれたUSLPGAツアー開幕戦「ダイヤモンドリゾート トーナメント・オブ・チャンピオンズ」だ。
 この試合で畑岡は最終ラウンドを首位に3打差の3位からスタート。「68」で回り、通算13アンダーの首位タイでホールアウトすると、3人によるプレーオフに進んだ。4ホール目からは一騎打ちとなり、5ホール目を終えても決着がつかず日没順延に。そして翌日、計7ホール目でバーディを奪った相手に惜敗した。

 翌週の第2戦も、首位タイで迎えた最終日の最終18番でパーパットを決めることができず1打差の2位。結局、序盤戦での2度の2位が昨シーズンのベストフィニッシュとなった。もしもどちらかで優勝していたら、かなり違う一年になっていたのだろうか。
「そうですね。シーズンを通して、もっと自信を持ってプレーできていたかなとは思います」
 ただ、優勝できなかったとはいえ、滑り出しとしては上々だった。だが、その後、オーストラリアでの2試合は開催されたものの、続くアジアシリーズは新型コロナウイルスの影響で中止に。日本に一時帰国していた畑岡は、米国に入国できなくなることを想定し、予定を早めて3月上旬に再渡米した。ところが、まもなく米国本土での試合も延期や中止が発表され、今度は日本への入国が制限される恐れが出たため慌てて帰国。それから5カ月近くを日本国内で過ごすことになった。
「去年の緊急事態宣言期間中は、自宅の“鳥カゴ”の中でボールを打っていました。ネットは前からありましたが、他にもマットとか練習器具はいろいろ買いましたね。卓球台を買ったのも同じ時期で、気分転換に時々遊んでいました(笑)」
 その後、宣言が解除され、ラウンドする機会も増えたものの、次の試合がいつ行われるのか分からない状況での調整が続いた。
「だれもがそうだったと思いますが、試合がないのにどうやって調整しようかなと。それに、休んでいてもやはり調子の波はありますから」

 とはいえ、先が見えない状況を悲観していただけではない。時間がたっぷりできたことを、むしろプラスにとらえた。
「これはオフと同じことができるなと。それで、オフと同じメニューの筋力トレーニングをもう1回やりました。使うバーベルも、シーズン中にやるよりもウエイトを重くして、週3回のペースで」
 畑岡にとって久々の実戦となったのは、6月下旬にずれ込んだ国内女子ツアーの開幕戦「アース・モンダミンカップ」。だが、大会初出場だったこともあり、38位タイに終わった。

その後、7月末にUSLPGAツアーが再開され、畑岡も8月中旬の「スコットランド女子オープン」から再参戦を果たした。この試合での畑岡の成績は、4日間通算1アンダーの12位。シーズン最初のメジャーとなった翌週の「AIG女子オープン」は64位に終わったものの、毎週試合に出場するうちに畑岡は調子を上げていく。
 アメリカ本土に戻って2戦目の「ANAインスピレーション」(9月第2週)。シーズン2戦目のメジャーで、畑岡は決勝ラウンドで「67」「69」という好スコアをマークして7位タイに食い込み、久々のトップ10フィニッシュを果たした。

「日に日に調子が良くなって、試合のなかで調整できました。飛距離も伸びたと実感できましたね。10ヤードくらいは伸びたかな」
 と、ツアー中断期間中の筋力トレーニングの成果を口にした。
 その後、畑岡は、「全米女子プロ」を含め、出場した3試合で連続してトップ5入り。優勝こそならなかったものの、賞金ランキング、平均ストロークともに5位という好成績で、USLPGAツアー参戦4年目のシーズンを終えた。

 そんな畑岡が、昨シーズンから新たに使い始めたギアがある。ひとつは、NEW『スリクソン Z-STAR』だ。アマチュア時代からプロ入り後しばらくは「Z-STAR XV」を愛用していた畑岡だが、アメリカ参戦2年目の2018年途中に「Z-STAR」にスイッチした。
「特にメジャーではグリーンが硬いので、ボールは少しでも止まりやすいほうがいいと思ったからです。新しいZ-STARは、グリーン周りのラフからのアプローチのスピンが増えて、さらに止まりやすくなったと感じるし、球の高さもイメージ通りですね」

 もうひとつは、『スリクソン ZX フェアウェイウッド』。3Wのほか、コースセッティングによっては5Wもバッグに入れている。
「私は、構えた時にペタッと地面に張りつくように見えるフェアウェイウッドが好きなのですが、ZXはまさにそんな顔をしているので、すぐに替えました。顔がいいのでいいショットのイメージが湧くし、出るボールも力強くなりましたね」
 また、同じスリクソンZXシリーズの『ZX7ドライバー』も、このオフのあいだにテストを実施した。
「顔がシュッとしていてシャープなので私は好きです。スイングに合わせて調整してもらったことで、計測データも徐々によくなっているので、あとは試合で使うだけです」

 昨年12月中旬に帰国後、畑岡は地元・茨城で練習やトレーニングを続けてきた。
「コーチがいないので、自分で考えながらやらないといけないのですが、何かを重点的に練習するというより、全体的にレベルアップすることを目標にしました。たとえば、スイングを自分の理想に近づけたり、機械でパットに関する数値を計測して参考にしたり」
 練習に関しては、2月上旬までドライビングレンジでのショット練習が中心だったが、スイングと使用するクラブが固まったことで、それ以降、ラウンドの割合を増やしている。

 USLPGAツアーは、まもなく2戦目の「ゲインブリッジ選手権」が行なわれる。開催コースのレイクノナゴルフ&カントリークラブ(フロリダ州)をホームコースとする畑岡にとっては、この試合が2021年の開幕戦となる。
「今シーズンは絶対に優勝したいです。去年の分と合わせて、今年は2勝しないといけないですね(笑)」
 畑岡のUSLPGAツアー参戦5年目が、実りあるシーズンになることを心から祈りたい。

畑岡 奈紗(はたおか・なさ)
1999年茨城県生まれ。11歳でゴルフを始め、高校3年時の2016年に「日本女子オープン」で国内メジャー史上初のアマチュア優勝を達成。翌17年からUSLPGAツアーに本格参戦し、18年ツアー初優勝。これまでに国内 5勝 (うちメジャー 4勝) 、米国 3勝。身長158センチ、血液型A。