みなさん、こんにちは、稲森 佑貴です。日頃は温かいご声援をありがとうございます。僕たち男子のツアーも、いよいよ国内での開幕戦が近づいてきました。
このオフ、僕は、去年とは調整方法を少しだけ変えました。去年は9日連続とか、ひたすらラウンドをこなしたのですが、今年はラウンドの回数を抑えて、トレーニングとショット練習を増やしました。
トレーニングは、基礎体力的な部分は地元・鹿児島のトレーナーさんに、ゴルフに特化したトレーニングは、ふだんツアーに帯同してもらっているトレーナーさんに見てもらいながら、有酸素系や体幹、それに新たに回旋系のメニューに取り組みました。トレーニングの目的は、飛距離アップはもちろんですが、アイアンの精度を高めること。まあ、アイアンの精度を上げることに関しては、永遠の課題だと思いますけど。
ゴルフの練習に関しては、新しいことはしていないのですが、新しい練習器具を買いました。マットとネットがセットになった、家でもアプローチショット練習ができる器具で、僕はそれを自宅マンションのベランダで使っています(笑)。夕方にちょっと時間ができた時に何かできないかと思い、ネットで探して見つけたものです。実家の練習場で練習していると、どうしてもドライバーとかアイアンのショットがメインになってしまうんですよね。
それは、バンカーショットにも好影響があったように思います。もともとバンカーショットは嫌いではないのですが、サンドセーブ率は、(賞金ランキング3位に入った)2018年はツアーで60位でした。それが、2020~21シーズンには10パーセント以上も上がって3位。そんなにランキングが上がったのは、実は最近人に教えてもらって知ったのですが(笑)、バンカーショットでも高さを出して“フワッ、ドンッ、トットットットット”という感じのショットが打てるようになりました。
2020~21年の僕の賞金ランキングは6位で、そこだけ見れば悪くはないのですが、ゴルフの調子がよかったことを考えると、もっと上に行けたんじゃないかというのが正直な気持ちです。特に日光CCで開催された去年の「日本プロゴルフ選手権」は、悔しさという点ではいちばん印象に残る試合でした。
試合をご覧になった方はご存じだと思いますが、僕は最終日を最終組でプレーしていて、16番ホールを終えてトップタイにいました。そして17番パー4では4メートルのバーディチャンスにつけたのですが、それをショートしてしまって。あれは本当にしょうもないミスでした。その悪い流れのまま、距離のある18番パー4ではセカンドをグリーン右に外して、3打目のアプローチもグリーン奥のカラーまで行ってしまってボギー。1打差で負けました。
実は、あの試合のプロアマトーナメントで、PGAの倉本会長(当時)と、日光CCのキャプテンという方と同じ組でプレーして、お二人からコース攻略のためのアドバイスをいろいろいただいたんです。だから情報収集はバッチリだったし、あの週はずっと調子がよかったのに、最後は自滅したような形になってしまったので、ホールアウト後は倉本会長の顔をまともに見られませんでした(苦笑)。
あの試合は僕の奥さんもコースに観に来ていました。彼女はスポーツが大好きで、僕の試合もそれまでに何度かコースで観戦したことはあったのですが、僕が優勝した試合は2度ともテレビ観戦(2勝目は無観客でした)で、優勝争いをコースで観るのは初めてでした。あの試合では、4日間、ショートカットせずに全ホールついてくれていたので、絶対に勝ちたかったのですが……。試合が終わったあと、僕よりも奥さんのほうが泣きそうな顔をしていましたね。
優勝できなかった僕が言うのもなんですが、日光CCは攻めごたえがあって本当にいいコースです。次に日光でメジャーが開催される時、僕が何歳になっているかは分からないけれど、その時こそ勝ちたいと思っています。
あの試合もそうですが、去年は優勝争いをしている最終日の終盤に伸ばしきれないことが多かったように思います。逆に、3日目を終えて優勝争いができる位置にいなかった去年の「ISPS HANDA ガツーンと飛ばせ ツアートーナメント」では、最終日にボギーなしの「63」というスコアが出て2位タイになりました。どうも僕は追いかけるほうが好きなようなのですが(苦笑)、最終日にトップにいると、たとえ何度勝っていても優勝は意識するものだし、プレッシャーからは逃れられないですよね。まったくプレッシャーを感じないようなら、僕はもう殿堂入りできるほどたくさん勝っているでしょう(笑)。プレッシャーがかかっても自分の力を出し切るには、もっと優勝争いを経験するしかないんだと思います。
さて、僕の今シーズンの目標ですが、まずは1勝したいですし、コースは変わりますが、去年悔しい思いをした「日本プロ」でリベンジできればと思っています。僕は“メジャーでしか勝てない男”と言われていますが(苦笑)、それはそれでうれしいし、やはりメジャーへの意識は特別です。メジャーの難しいセッティングに周りの選手たちが苦しんでいるのを見ると、「我慢すれば自分は上にいけるんだ」と思えて、気合が入るんですよね。ギャラリーのみなさんには、バーディを量産したほうが見ごたえがあるし、選手も伸ばし合いのほうがプレーしていて楽しいかもしれません。でも、僕は一打が命取りになるようなシビアな優勝争いのほうが好きなんです。
稲森 佑貴(いなもり・ゆうき)
1994年鹿児島県生まれ。2011年、国内男子ツアー史上最年少(当時)となる16歳でプロテストに合格。14年初のシード権を獲得。18年「日本オープン」で待望のツアー初優勝を飾ると、20年には同大会2勝目。2020~21シーズンは賞金ランキング6位、フェアウェイキープ率は15年から6年連続で1位。身長169センチ、体重68キロ。血液型A。