2022/06/09

D-Cafeレポート

《リラックス・トーク》歴史のある試合に勝てた喜びは格別。国内最古のメジャーにも照準 ~ 稲森 佑貴~

 みなさん、こんにちは、稲森 佑貴です。いつも温かいご声援をありがとうございます。今日は、5月中旬に出場した海外メジャー「全米プロ」のお話からしようと思います。
 僕はこれまで「全英オープン」には2度出場していますが、アメリカでのメジャーに出るのは今回が初めての経験でした。開催コースの「サザンヒルズCC 」の第一印象は、とにかく地面が硬い(苦笑)。7556ヤード・パー70という設定は、数字だけ見るとビックリしますが、ティショットがフェアウェイに行けばランが出るので、長いパー4でも案外セカンドショットでグリーンに届きました。ただ、最終18番は500ヤード近くあってアゲンストもキツかったので、パーオンするのは厳しかったのですが。

 グリーンも、小さいもののやわらかくて、スピードも想像していたほど速くありませんでした。だから、ちゃんとグリーンをとらえることができればバーディチャンスについたのですが、ティショットをラフに入れてしまうと、セカンドショットがすごく難しかったです。ラフの芝はティフトン系で、打ってみたら意外とボールが出てくれたものの、どれだけ飛んで転がるのかの計算が難しい。ラフからのショットは直接グリーンに落とすと止まらないので、花道を使って手前から攻めるようにしてもオーバーしてしまって……。

 それでも、初日にプレーしている時には「やれる」という手ごたえを感じていました。スコアは2オーバーでしたが(注:順位は56位タイ)、それほど悪いゴルフではなかったし、2日目も前半は頑張れていました。でも、2日目の折り返し後はティショットのミスが続いて、ボギーやダブルボギーが来てしまいました。
 ティショットをミスしたのは、体力不足もあったと思います。気温が高くてしんどかったこともありますが、途中でバテてしまって、ティショットがつかまらなくなってしまいました。それで、打ってはいけないサイドに打ってしまったり。

 その結果、予選落ちに終わったのですが、今は「もっとやれたかな」と感じています。全然歯が立たないとは思わなかったし、もう少し上手くプレーすれば、少しは上に行けたんじゃないかと。結局優勝スコアは5アンダーで、伸ばし合いの試合ではなかったですからね。
 チャンスがあればまた挑戦したいけれど、次に挑戦するとしたら、その前にアメリカのコースに慣れることが一番の対策なんじゃないかと思います。もちろん、体力をつけることも大事ですが、今回苦戦したグリーンも含めて、とにかく向こうのコースでプレーして慣れる。そうして経験を積んでいくことが大切だと思います。

 以前の「リラックス・トーク」でもお話しましたが、僕は今シーズンの目標として「賞金王」を掲げています。そのためには序盤戦で勝ちたいと思っていたのですが、狙い通りというか、「中日クラウンズ」(4月第5週)で優勝することができました。応援してくださったみなさん、どうもありがとうございました。

 開催コースの和合(名古屋ゴルフ倶楽部和合コース)は、最初にプレーした時に自分の好きなコースだと思ったし、お世辞ではなく「いつか優勝したいな」とずっと思っていました。でも、去年まで6回出場して自己ベストが9位で、トップ10に入ったのは2回だけ。毎回、試合が終わると「もっとできたんじゃないか」という気持ちになっていました。
 それが今年は開幕戦から調子がまずまずだったし、あの大会が始まってからも手ごたえを感じてプレーしていました。そして、最終日はトップと2打差のスタートだったので、もちろん優勝は意識していたものの、途中から雨が降り出したので、雨の和合をどう攻略するかに集中していたんです。
 それに、あの日僕は最終組のひとつ前でプレーしていて、途中、リーダーボードを見たら、最終組がスコアを伸ばしているのがわかったので、同じ組の他の選手とは「僕らは僕らでしっかりやりましょう」という雰囲気になっていました。
 そんなふうにプレーしているうちに、気づいたら「あれ? 俺の順位こんなに上がってる!」という感じで(笑)。だから、優勝できたのはもちろんうれしいのですが、優勝争いをしている意識がほとんどない中での優勝だったので、すぐには実感が湧きませんでした。優勝にはいろいろな形があるし、どれも優勝には変わりないものの、今回は本当に不思議な優勝でしたね。

「中日クラウンズ」での優勝で、“メジャーでしか勝てない男”という、うれしいような、うれしくないような呼び名とサヨナラすることができました(笑)。でも、メジャーで勝てれば当然うれしいし、やっぱり僕は歴史のある大会で勝ちたいんです。もちろん出る試合は全部勝ちたいと思ってプレーしますが、特に歴史の長い大会では上位に行きたい気持ちが強いし、和合もそんな試合の一つでした。

 あの試合もそうですが、開幕からいいプレーができている要因のひとつは、オフのトレーニングにあると思います。トレーニング内容は以前とそんなに大きくは変えていないのですが、新たに回旋系のメニューを取り入れて、体幹を鍛え、バランス感覚を養うメニューを中心に取り組みました。ケガをしたら元も子もないので、やり過ぎないように注意しながらやったのですが、今のところ、それが上手くいっている気がします。

 男子ツアーも序盤戦が終わって、これから中盤戦に入ります。6月中旬にオープンウィークがありますが、僕はその週は沖縄で開催される「九州オープン」に出場するので、もうしばらく試合が続きます。移動距離もかなり長くなりますが、身体のケアをして、疲れをとりながら頑張るつもりです。

 そして少し先になりますが、8月初旬には「日本プロ」があります。以前もお話しましたが、去年の大会では最終日の上がり2ホールでミスをして優勝を逃し、すごく悔しい思いをしたので、今年は絶対にリベンジを果たしたい。開催コースの「グランフィールズカントリークラブ」(静岡県)はまだプレーしたことはないけれど、日本プロは国内でいちばん古いメジャー(公式戦)なので、ぜひ優勝を狙いたいですね。

稲森 佑貴(いなもり・ゆうき)
1994年鹿児島県生まれ。2011年、国内男子ツアー史上最年少(当時)となる16歳でプロテストに合格。18年「日本オープン」でツアー初優勝を飾ると、20年に同大会2勝目。今年5月の「中日クラウンズ」でツアー3勝目。今季賞金ランキング6位(6月5日時点)。身長169センチ、体重68キロ。血液型A。