2023/01/11

D-Cafeレポート

《2023年初春スペシャル 山下 美夢有プロ インタビュー》女王になっても、まだ道半ば。もっと、もっと上をめざしたい

 あの試合は、勝ってから「メジャーを獲れたんや」と思いましたけど、プレーしている時は、メジャーということをほとんど意識していませんでした。というのも、その前週まで3試合連続で予選落ちしていたので、まずはやるべきことをやろうと思ってプレーしたからです。それをやった結果、優勝できた、という感じでした。
 メジャー初優勝はもちろんうれしかったのですが、あの試合から技術面がよくなって、ショットが安定するようになって、その影響でパッティングストロークもよくなったので、そのうれしさの方が大きかったかもしれません。
 技術面というのは、〝スイング中、身体のここがこうなっていて……〟とか、細かいことじゃなく、タイミングに関することです。トップからの切り返しで、ほんの少しだけ間をとるという、それだけのことだったんですけど、それに気づかずに、その前の3試合でいろんなことをやってしまい、スイングがおかしくなっていたんです。だから、あの試合では、シンプルにタイミングだけを考えたのがよかったのかなと。
 スイングがよくなってショットが安定したことが自信につながったので、それがメジャーに勝って自分がいちばん変わったところだと思います。

 あの試合は、まず、海外の選手がたくさん出場していたので、それだけで日本の試合とは全然雰囲気が違うなっていうふうには思いました。それに、「メジャーなんや」と思うと、やっぱり緊張しました(苦笑)。特に初日は、「今の実力でどれぐらいいけるんやろう?」という不安も少しありました。ただ、「やり切ろう!」と思ってティには立ちましたけど。
 リンクスでプレーするのは初めてでしたが、会場になった「ミュアフィールド」はそれほど難しいという印象は受けませんでした。バンカーに入れてしまったら難しいなとは思いましたが、基本的にフェアウェイが広くてフラットだったので、ティショットの精度をしっかり高めておけば、そこまでバンカーに入ることもなかったので。グリーンも、それほど傾斜が強くありませんでした。ただ、風の計算とか、天候への対応では苦しんだので、それがリンクスの難しさかなとは思いました。
 正直に言えば、「もうちょっとできたかも」「もったいなかったな」という気持ちもあります。でも、途中まで上位で戦えた(注:最終順位は通算4アンダーの13位タイ)ので、初めての海外メジャーとしては、まずまずだったと思います。

『スリクソン ZX5 Mk II(マークツー)』ドライバーは、あの試合の練習日に初めて試打しました。打ってみて「いいな」と感じたのと、データを見てみたら、飛距離が伸びていたんです。前のクラブとくらべて弾道が高くなって、キャリーがそれまで210ヤードちょっとだったのが220ヤード出ていました。トータルの距離も平均して伸びたので、「すぐに試合で試したい」と思ったので替えました。
 実際に試合で使ってみて、出球が自分のイメージ通りだったのもよかったです。打った瞬間に左右にブレると、試合では使いにくいのですが、「ZX5 Mk II」ドライバーは自分の思った方向に出て、安定した球で飛んでくれます。
 3Wと5Wのフェアウェイウッドもあの試合から「ZX5 Mk II」に替えました。試打してみて感触がよかったので、ドライバーと一緒に。フェアウェイウッドも弾道が高くなって、特に3Wはかなり飛距離が伸びました。あの試合で、完全優勝できて、しかもスコアも大会記録を更新できたのは、新しいドライバーとフェアウェイウッドがすぐに武器になってくれたのも大きいと思います。

 平均ストロークに関しては、正直あまり意識していなくて、最終戦の前になって、通算12アンダーを出せば平均ストロークが60台になるのを知りました。実際に達成(注:通算15アンダーでフィニッシュし「69.9714」)したあとも、「あぁ、60台なんや」と、あまりピンとこなかったというのが正直な気持ちで(苦笑)。
 シーズンの途中でスコアをあまり気にしていなかった理由は、自分としては、そこまでいいゴルフができていなかったし、平均ストロークもそれほどいいとは思っていなかったからです。
 なぜ平均ストロークがよくなったのか。それは、ショットが一昨年までよりもだいぶ安定したからだと思います。ドライバーもアイアンも、左右へのブレが減りました(注:フェアウェイキープ率が2020~21年の9位から2022年は 5位に、パーオン率は2020~21年の18位から2022年は1位にそれぞれランクアップ)。たぶん、それが以前とのいちばん大きな違いだったかなと思います。
 ショットが安定した理由としては、スイングのタイミングもそうですが、身体を大きくできたのがよかったと思います。2021年の後半戦はけっこう疲れが出て、体重が落ちてしまったのですが、今年は最後まで体重を落とさずに完走できました。ご飯も肉を中心にしっかり食べられていたので(笑)、その分パワーも出ていたし、1年間安定して力を発揮できたと思います。

 メルセデスランキング1位については、メディアのみなさんをはじめ、いろいろな方から言われていたので、口では「気にしていない」と言いながら、やっぱり気にはしてました(笑)。それに、途中からは、「女王のタイトルを獲りたい」という気持ちでプレーするようになって、その気持ちがあったから獲れたのかなと思います。自分を追い込むというか、その目標があったから目の前の一打に集中することができた、という面もあります。
 いろいろな賞もいただいて、たくさんの方に「おめでとう」と祝福していただいて、「女王になったんやな」と実感が湧きました。ただ、気持ちとしてはそれほど満足する感じはないんですよね。たしかに、目標としていたことは達成できたけれど、まだまだ足りないところがあるから。だから、「よかったなぁ」という思いはあるものの、「もっと、もっと」という気持ちが強いんです。課題というか、やるべきことは、一つとか二つじゃなく、たくさんあるので、そんなに慌てずに徐々にやっていけばいいかなと思います。

 2022年は、本当にたくさんの方々に支えられて、応援もしてもらったおかげで活躍できたし、一位になることができました。今年も、感謝の気持ちを忘れずに、たくさんの方に応援してもらえるように頑張りたいですし、恩返しできたらいいなと思います。
 具体的な目標としては、まずは1勝を狙います。そして、2022年と変わらず、常に上位で戦えるようにしたいですし、同じような成績を残せればと思います。
 それに、海外メジャーにも挑戦したいと思います。去年の全英女子オープンは、コースの地面が硬くて、ふだんあまり飛ばない私でもけっこうランが出たので、通用したのかなと思うんです。でも、「全米女子オープン」とかになると、やっぱり距離が長くなるし、グリーンももっと難しいでしょう。私はまだ経験していないですけど、今の自分の実力でどこまでできるのか、試してみたいと思っています。

《山下 美夢有(やました・みゆう)選手のプロフィール》
2001年大阪府生まれ。大阪桐蔭高校3年時の2019年に「関西女子アマチュア」で優勝し、同年プロテスト合格。
ルーキーとして参戦した2020~2021シーズンに早くもツアー初優勝。
2022年「ワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップ」で初のメジャー優勝を飾ると、「宮里藍 サントリーレディスオープン」(6月)、「ミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープン」(9月)、「伊藤園レディス」(11月)で優勝。さらに最終戦のメジャー「JLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ」でシーズン5勝目。2022年はメルセデスランキングをはじめ、年間獲得賞金、年間トップ10回数、平均ストローク、パーオン率、パーセーブ率でツアー1位。身長150センチ、血液型A。