2023/05/12

D-Cafeレポート

《新企画! 星野 陸也 Ricky’s Tour Diary ①》ドライバーは、何より〝顔〟が大事です

 今、ダンロップ契約のプロのみなさんがツアーで使用している『スリクソン ZX Mk II シリーズ』のドライバー。僕は基本的に「ZX5 Mk II」(以下、ZX5)を使っていて、操作性がほしいと感じるコースや自分の調子によっては「ZX7 Mk II」(以下、ZX7)をもう一本のエースとして使っているのですが、他の選手と同じように、僕も開発の段階で自分なりの考えや意見をダンロップの開発チームにお伝えしていました。
 僕が主にやりとりをしたのは日頃男子ツアーのサービスカーで作業しているクラフトマンの方でしたが、いちばん時間をかけて話したのは、ヘッドの見え方、いわゆる顔についてでした。というのも、ドライバーは何よりも顔がいちばん重要だからで、目標に対してスッと構えられないといけないんです。

 これはたとえばの話ですが、よく見てみると微妙に左を向いているフェースのドライバーがあるとします。そういうクラブでも、練習ではいいショットを打てるのですが、いざ試合の緊張した場面になると、フェースの向きが気になる。「あれ? このフェース、こんなに左を向いてたっけ?」と考え始めると、練習では何も考えずに構えられていたのが、フェースを目標に合わせようとします。すると、それまではまっすぐ行っていたのに、急にボールが右に行ったりすることがある。だから、やっぱりしっかりした見た目のヘッドが大事なんです。

 上から見たドライバーのヘッドというのは、ざっくり言うと三角形をしています。フェース面が底辺で、バックのいちばん突き出ているところが頂点ですね。この頂点の位置をトゥ寄りにするか、ヒール寄りにするかで、ヘッドの印象はかなり変わってきます。
 プロや上級者の中には、頂点の位置がトゥ寄りのほうが好きな人と、ヒール寄りが好きな人がいて、たとえば、「頂点はヒール寄りにあるほうがフェースがまっすぐに見える」という人がいます。フェースの見え方は、利き目が左右どちらなのか、ハンドダウン、ハンドアップのどちらで構えるのかによっても変わるのですが、頂点をどちらかに寄せ過ぎてしまうと、一部の人たちには構えやすくても、もう一方の人たちには違和感しかない、ということになってしまいます。
 だから、僕は「ZX Mk IIシリーズ」の開発段階のヘッドのモックアップ(実物大の模型)を見せてもらうたびに、「三角形の頂点はバックの中心にあったほうがいいと思います。そうすることでより多くの人が構えやすくなるから」と自分なりの意見を伝えました。つまり、トゥ側のカーブとヒール側のカーブが同じように見えたほうがいいということで、それは「ZX5」と「ZX7」どちらにも言えることです。
 フェースも同様で、たとえば、トゥ側だけ、あるいはヒール側だけを〝逃がす〟と全体のバランスが悪くなります。フェースの見え方も利き目や構え方によって変わるのですが、やはりフェースも真ん中を中心にトゥ側とヒール側のバランスがよく見えたほうが、より多くのゴルファーが違和感なく構えられるように思うんです。
 そうした僕なりの考えを伝えたのですが、製品として完成したドライバーは、「ZX5」も「ZX7」も僕のイメージ通りでした。それはもう完璧と言っていいくらいに(笑)。僕が言うのも何ですが、やはりダンロップの製造技術はスゴいので、どちらもバランスのいい、メチャきれいなヘッドに仕上がったと思います。

ZX5」と「ZX7」のヘッドの形について僕なりに説明すると、まず「ZX5」は、従来モデルにくらべ、より三角形に近くなったと思います。今流行りの新しい形で、僕は〝シュッとした顔〟と言っているのですが、より三角形をイメージできるので、ポンと目標に向けやすいし、それに向かってまっすぐ飛ばしやすい形をしていると思います。フェースも完全に松山(英樹プロ)さん好み (笑)。まっすぐなので、メチャクチャ構えやすいです。
 一方の「ZX7」は、「ZX5」にくらべると丸みを帯びて見えます。ただ、丸いながらも、バランスよく、偏りのない形になっていると思います。そして、「ZX7」のヘッドのほうがわずかですが小ぶりに見えます。実際に体積も小さいのですが、小さいヘッドのほうが普通は重心距離も短いので、ヘッドが返りやすい。いわゆる操作性がいいのですが、少し丸みをつけたことも、操作しやすそうな印象につながっています。

 一般的に小さいヘッドというのは、低い球とか、ドローやフェードが打ちやすく、逆に大きなヘッドは、打ち出しが高くて、左右へのブレが少ない、ストレート系でドーンと飛んでいく球が打ちやすいと言われます。これが、たとえば、ヘッドが小さいのに、より三角形に近くて、いまひとつ操作しにくそうな形になっていたりとか、性能とヘッドの形状にギャップがあると、プロや上級者は戸惑ってしまいます。その点、「ZX7」と「ZX5」は、それぞれ性能とヘッド形状がマッチしているので構えやすいし、いいショットのイメージが湧くんです。
 今回は顔の話だけで終わってしまいましたね(苦笑)。なので、ドライバーの話の続きはいずれまた。

星野 陸也(ほしの・りくや)
1996年茨城県生まれ。6歳でゴルフを始め、20歳でプロ転向。2018年ツアー初優勝を飾ると、これまでにツアー通算6勝。21年東京オリンピック日本代表。22年は賞金ランキングで自己最高の2位となったほか、ゴルファーとしての総合力の指標である「トータルポイントランキング」で自身初の1位に。今季は国内ツアーのほかDPワールド(欧州)ツアーにも参戦中。身長186センチ、体重76キロ。血液型O。