D-cafe:最終日は2位に2打差をつけて単独トップで迎えました。スタート前はどんなことを考えていたのですか?
小木曽:「今回勝てなかったら、たぶんしばらく勝てないだろう」とか「こんなチャンスはもう二度とないぞ」とか、それぐらい自分にプレッシャーをかけたし、「2打差で勝てなかったらやばいな」と思っていました。ただ、2位にいたのが比嘉(一貴プロ)さんという強敵だったのが逆によかったですね。もしも2位が僕の全然知らない韓国の選手だったら、油断みたいなものが出てしまったかもしれません。相手が比嘉さんだったので油断できなかったし、自分がしっかりといいゴルフしないとダメだと思ってプレーできたのがよかったのだと思います。
D-cafe:そして、首位タイで迎えた最終18番パー5では、第3打のアプローチをピンそばに寄せました。
小木曽:あのアプローチは完璧でした。打つ前はめっちゃ緊張していましたけど(笑)、ピンに寄って、「あ、優勝したな」と思ったら、ちょっと泣きそうになりました。
D-cafe:(笑) 勝った瞬間には涙は出なかったようですね。
小木曽:そうですね。うれしい気持ちのほうが強かったです。
D-cafe:ABEMAツアーでは3勝していましたが、やはりレギュラーツアーの優勝の味は違いましたか?
小木曽:いやぁ、全然違いますよ。やっぱり露出の量が違うので、知ってもらえる人の数が違うし、ちょっとは僕の名前を覚えてもらえるかなと思うので。
D-cafe:優勝した試合で、特に貢献したギアを挙げてもらうとしたら何でしょう?
小木曽:最終日の18番の3打目でも使ったクリーブランドの『RTX DEEP FORGED 2 ウエッジ』の60度ですかね。使い始めたのは、1年前くらい前に、コブさん(小袋 秀人プロ)から、「(クリーブランドのウエッジの中では)これがいちばん打感がやわらかいから使ってみたら?」と勧められたのがきっかけでした。それで打ってみたら、軟鉄鍛造だからだと思うのですが、たしかに打感がすごくやわらかくて。フェースへの食いつきがよくて、ショットのイメージが湧くのですぐにチェンジしました。〝顔〟も、いわゆるプロモデルではないのでちょっと大きめなんですけど、僕の好きなまっすぐな顔に近いし、ちょっとグースが入っているところも構えやすいんです。あの試合でもかなり助けてもらった気がします。
D-cafe:プロ9年目でのツアー初優勝ですが、やはりここまで長かったと感じますか?
小木曽:優勝するのにだいぶかかりましたけど、長さで言えば、去年シード権を獲るまでの方が長く感じましたね。シード権を獲るまでに8年かかりましたから。
D-cafe:今年は、5月の「中日クラウンズ」と6月の「日本ゴルフツアー選手権」で、最終日をトップで迎えたものの、いずれもスコアを伸ばせずに優勝できませんでした。それについて、自分なりに分析はしたのでしょうか?
小木曽:はい。僕は、去年9月の「パナソニックオープン」で初めてツアーでの最終日・最終組を経験したのですが、その時も最終日は「+2」でした。そして、今年のその2試合も最終日のスコアは「+2」と「+3」で……。それについて、コーチの堀尾研仁さん(ゴルフティーチングプロ)とも話したのですが、僕はどうしても最終日になると〝引いてしまう〟ところがあって。3日目まで攻めているから、その位置にいられるのに、最終日はちょっと守ってしまう部分があって。かと言って、攻めっぱなしでもダメですよね? だから、メリハリをつけて、守るところはちゃんと守るけど、勝負だと思った時は、もう行き切ろうと。韓国の試合では、それをやったのがよかったのだと思います。
D-cafe:「中日クラウンズ」の後、3週続けて予選落ちした期間には、堀尾プロとスイングの調整をしたそうですね。
小木曽:はい。僕は元々スイングがアップライトで、球が右に行く傾向が強かったんです。それで、3年前から堀尾さんと一緒にフラットなスイングに変えたのですが、今年はフラットになりすぎていました。それだと、左に行ってはいけない場面で左への球が出てしまうんです。「中日クラウンズ」でも、フラットすぎる感覚はあったのですが、3日目まで結果が出ていたので、そのままイケるかなと思ったんですけど……。だから、その後の3週間でもう少しアップライトにしようと調整しました。そうしたら、「日本ゴルフツアー選手権」の練習場でハマった感触があって、それまであった不安要素がなくなって、それが韓国の試合でも続いた感じですね。
D-cafe:ダンロップのスタッフに聞いたところによると、身体も大きくなっているとか。
小木曽:そうですね。堀尾さんと出会ったのと同じくらいのタイミングで筋力トレーニングを始めたのですが、体重は5kgぐらい増えました。筋トレをやることで瞬発力もついたと思います。
D-cafe:それまではトレーニングはしていなかったのですか?
小木曽:いえ、トレーニング自体はやっていたんですけど、ウエイト系はまったくやっていなかったんですよ。筋トレはあまり好きじゃなかったので(苦笑)。でも、せっかくスイングを変えるんだったら、身体も変えないともったいないなと思ったのが始めたきっかけですね。
D-cafe:やはりいろいろな意味で、堀尾プロとの出会いは大きな出来事だったのですね。
小木曽:はい。他でも話していますけど、堀尾さんと出会えていなかったら、去年シードも獲れていないと思うので、すごく感謝しています。もちろんスイングが変わったのがいちばんの進歩なんですけど、堀尾さんに教えてもらったことで、スイングに関していろいろ勉強できたし、ゴルフの知識も身につきました。ただ、初優勝はできましたが、お互いまだ上を目指そうと思っているし、同じ方向に一緒に向けているんじゃないかなと思います。
D-cafe:たしかに、去年は出場したツアー24試合のすべてで予選を通過して、賞金ランキング上位者しか出られない最終戦にも初めて出場しましたね。
小木曽:トップ10に入るのはもちろん大事なんですけど、僕はトップ15も大事だと思っているんです。去年、僕はトップ10に入ったのは3回だけでしたが、トップ15には結構入ったんです。トップ15以内でも、それなりの額の賞金がもらえますから。だから、10位から15位の間というか、そのあたりの1打も大事だなと思うことが多かったです。
D-cafe:今シーズンはパットも好調ですよね。ツアーでの平均パットが、去年は27位だったのが、今年は2位(※6月30日時点)につけています。
小木曽:たしかにスタッツはいいですよね。でも、なんでだろう? すごくパットがいいという感じはしないんですけどね(苦笑)。去年とくらべて、今年どこかを変えたということもないですし。ただ、入れ頃がちゃんと入っている感じはあるし、とにかくバーディはたくさん獲れています(笑)。
D-cafe:ツアーで優勝したことで、夢が膨らみますね。
小木曽:そうですね。プレーできるチャンスが広がった気がします。それに、今年の前半戦で勝てたということに大きな意味があると思っています。まだ7月で、これからも試合はたくさんありますからね。今は調子がいいし、メンタルも充実しているので、今年のうちにもう一度優勝したいと思っています。
D-cafe:ありがとうございました。今シーズンのさらなる活躍に期待しています!
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