住友ゴムグループの(株)ダンロップスポーツマーケティングは、【CX】【SX】【FX】というダンロップ基幹3シリーズに加え、新シリーズ【LX】を発表し、【ダンロップ LX1000】を新発売いたしました。これは従来の【スリクソン REVO CS 10.0】を引き継ぐもので、メーカー希望小売価格は、39,600円(税抜き価格 36,000円)です。
テニスラケットの世界には「同名のロングセラーモデル」はいくつかありますが、形状が変化したり、メインのスペックが大きく変化している場合が多く、まるで同形状のままラインナップされているラケットは数少ないですね。
そんななか、モデル名やコスメティックをさまざまに変えながらも、「ほぼまったく同じ形状・スペック」で販売され続けているラケットがあります。2002年に【DUNLOP SPACE-FEEL PRIME OS】というネーミングで登場し、最新の【DUNLOP LX 1000】として衣替えデビュー。これがなんと「11代目」という怪物モデルがそれです。
非常に個性的な形状を与えられたにも関わらず、きわめて多くのファンの声によって支えられてきた伝統的モデルは、あまりに指示の声が強くて「モデルチェンジしたくてもできなかった」という状況で、現在に至ります。我々ダンロップも、まさかこんなことになるとは想像していませんでした。
いつしか付けられたニックネームが『魔法のラケット』。それは、非力な方やベテランプレーヤーのテニスを楽しくさせ、それだけでなく、そこそこパワーのある男性でも使いこなせてしまうという不思議さ。自分のテニスがワンランクアップしたように感じさせてくれる「魔法」に包まれたラケットとして、今でも「これがなくなっては困る」という強い支持によって生き続けているのです。
かつて同形状のシャフトが多数発売されてきましたが、テニスラケットに求められる美しさに刃向かうような形状のため、ほとんどすべて消え去りました。それほど、テニスラケットには「使いたくなる形状的美しさ」が求められるものですが、【LX1000】はそんな常識を凌駕してしまう「性能的メリット」が存在したのです。
ストレートシャフトは超軽量フレームでねじれの少ない高剛性フレームを構築するために、もっとも合理的な形状です。「255グラム」という超軽量フレームは、非力なプレーヤーでも楽々とスウィングコントロールできる鋼鉄のスペック。
この軽さのおかげで、「27.5インチ」という長さでも、違和感なくスウィングすることができるのです。一般的に「0.5インチロング」はスウィングの起動に負担がかかり、振り出し始めるのが辛くなるはずですが、【LX1000】では、まったく問題にされたことがありません。だって……振ろうとしなくてもいいんです。ボールが飛んでくるところへ、【LX1000】を持っていくだけで、思いどおりの返球ができてしまうのです。
「0.5インチロング」に違和感を覚えるもう一つの要素として「スウィートエリアの位置が変わること」が挙げられます。フレームが長くなると、スウィートエリアも引き上げられ(身体から遠くなり)、違和感が生じるもので、それが「長ラケが受け容れられにくい」という理由でもありました。
ところが【LX1000】は、長くなっても、それまでとまったく同じ感覚のスウィングのままで、ベストなスイートエリアで捉えられるようになっています。なぜなら、「115平方インチ」ではありますが、縦ストリングが普通のラケットよりもはるかに下まで伸びているからです。これによってスイートエリアの位置は27.5インチ基準のよりもやや下、つまり27.0インチのラケットとほぼ同じ位置がベストポイントとなるのです。
楽に返すことができる……無理に振ろうとしなくていいからこそ、ボールが飛んでくるところにポイントを合わせるだけでいい。だから誤差の少ない打球が飛んでゆくのです。すべてのスペックの相乗効果によって生まれた奇跡……プレーヤーにとって『魔法のラケット』となる由縁です。
このモデルの変遷を表わす画像を見ていただくとわかるとおり、モデルチェンジのたびに機種名がずいぶんと変わってきました。最初は【スペースフィール・プライム】でしたが、ダンロップラケットのメインテクノロジーを表わす【ダイアクラスター】。ブランドが【スリクソン】となってからは【レボ】という名称が与えられてきました。
そのモデル名よりもはるかに強くイメージ化されてきたのが【10.0】という数字でしょう。【ダイアクラスター】以来、【10.0】がこのラケットを指してきました。2006年以降、テニスショップで「【10.0】をください」と言うだけで、このラケットが出てきます。
それが【1000】になったのは、スリクソンからダンロップブランドに戻り、40年前からインターナショナルモデルに与えられてきた「100番台」を継承して【REVO 2.0】→【CX200】、【REVO 3.0】→【SX300】。だから【10.0】→【1000】となりました。【LX】の【L】はライト・軽量の意味。
2002年〜の【スペースフィール時代】のイメージカラーはオレンジ。【ダイアクラスター時代】はホワイト。【レボ時代】はちょっと黒が入った感じと、イメージカラーの変遷もありました。そして最新【LX1000】は「銀白」です。このモデルをご愛用くださっているプレーヤーはもちろん、まだ「魔法」を体験なさっていない方も、ぜひこのラケットにハマってください。「買い替えで悩む」ということがなくなりますよ(笑)。
商品の詳しい内容は下記よりチェック!
https://sports.dunlop.co.jp/tennis/contents/2021lx/index.html
心理学的には「破壊衝動」。これは誰にでも潜んでいるものですが、それを抑えることができるかできないかが、この行為に走ってしまうこと引き金となるわけです。破壊衝動を引き起こす要因はいくつかありますが、テニスコートでのそれは「ストレスの転換」です。自分が思ったとおりに物事が進まないことに対するストレスが充満し、それをなにかの形で発散させようとして、自分の戦いの相棒であるラケットを叩き折る行為をするのです。
訳知り顔の方は「あれはプロとして激しい闘志の表われである。そのくらいでないと、プロの過酷な戦いを勝ち抜けない」などとおっしゃる方もいますが、プロスポーツというものが、いかにして成立し、どう成長してきたか、またどうあるべきかを知っていれば、そんな言葉は出てこないはずです。
プロスポーツというのは「エンターテイメント」であり、プレーヤーは自分のプレーによって観客を喜ばせ、満足させることでお金をいただく「職業」です。企業は、プレーヤーの注目度や人気、アピール性に対して多額の「契約金」を支払い、トッププロは場合によって巨万の富を手にするのです。
そのためには「責任」「義務」が存在するはずです。プレーヤーは、プロとなった瞬間から、それらを背負うことになりますが、「彼らの責任」とは何でしょう? もちろんトーナメントに参加するに当たり、ルールや規約を遵守することは当然。大会運営側が「試合後のインタビューに出席すること」という規約を定めているトーナメントに出場するということは、それらの規約を守る約束をしたということであり、拒否することなど許されなくて当然、罰金措置も規約に書かれているのです。
そんな義務も果たせない選手など論外ですが、プロが背負うのは「つねに注目されることは覚悟し、多くの人々の手本となるような生き方を示さなければならない」という責任です。これまで数え切れないプロ選手が、若い頃は暴れ者でも、しだいに偉大な選手へと変貌してきました。自分はプロとしてどのように振る舞うべきか? を知るからです。
SNSで、こんな書き込みを見ました。
「昔はマッケンローやコナーズも大暴れしてたじゃないか。ラケットを叩き折るくらいなんだってんだ!」
「暴れ」の質が違います。彼らが怒りを爆発させていたのは、ジャッジに対する異論の訴えでした。審判に向かって激しい口調で抗議したり、それが聞き入れられないときは、ベンチの上の荷物を薙ぎ払い、しまいにはベンチをひっくり返してしまう……。彼らは「いちばん近くで見ていたのは自分だ!」という確信があり、間違いに対して抗議するのは当然だというロジックです。自分が思いどおりにできないことに対する「腹いせ」ではありません。
それに、観客は大盛り上がり! コロシアムは興奮の坩堝と化すのです。
これが『プロスポーツ』ですよ。マッケンローもコナーズも、それが会場を盛り上げることを知っていましたし、「悪童」と呼ばれ続けたマッケンローは、とても穏やかにジュニアを指導し、理路整然たる解説をするレジェンドになっています。
彼らがラケットを叩き折る姿を見たことなどないですよね……。マッケンローが日本にジュニアに指導するところに居合わせたことがありますが、「ラケットは自分の手と同じだと思ってね」と優しく話していたのが強く印象に残っています。
競技は違っても、プロとしても心は同じと思います。
あるメジャーリーグ選手の言葉を、ラケット破壊を続けるテニス選手を正座させて聞かせてやりたいです。
「我々は野球を愛してくれる子供たちの模範とならねばならない。それがプロ選手の務めだから」
多くのファンもそう思っています。憧れでキラキラさせた目で「あんな選手になりたい!」と願うのです。選手たちはそれに応えようと、素晴らしいプレーを見せる。だからこそお父さんは子供を球場へ連れて行き、その姿を目に焼き付けさせるのです。
テニスコートで世界の頂点に立つプレーヤーが、自分のプレーが思い通りにいかないと腹を立て、相棒であるラケットをコートに叩き付けてバラバラに破壊する暴力的な行為を見せるために、自分の子供を連れて行くでしょうか?
今日のプロテニスは、残念ながらそういう認識に乏しいと言えます。「自分は強いから金をもらえる」と誤解しているのかもしれませんが、「見てくれる人がいるからお金をもらえる」のです。プロテニスは、観客あっての存在。自分が鍛えてきた珠玉のパフォーマンスを披露し、観客を楽しませることで入場料をいただくということを認識し直して、自分はどのように振る舞うべきかを考えれば、ラケット破壊がどうなのかを理解することができるでしょう。
松尾高司氏
おそらく世界で唯一のテニス道具専門のライター&プランナー。
「厚ラケ」「黄金スペック」の命名者でもある。
テニスアイテムを評価し記事などを書くとともに、
商品開発やさまざまな企画に携わられています。
また「ダンロップメンバーズメルマガ」のサポーターも務めてもらっています。