2022/10/20

SRIXON製品情報

《スリクソン ZX Mk IIシリーズ 誕生STORY① ドライバー編》 プロからの度重なるフィードバックが可能にした圧倒的なボール初速と飛距離

※プロの使用クラブに関する情報は10月9日時点のもの。

 9月15日に初日を迎えたPGAツアーの2022~23シーズン開幕戦「フォーティネット選手権」。この大会で松山 英樹プロが初めて実戦に投入したドライバーが『スリクソン ZX Mk II(マークツー)シリーズ』だった。日本国内でも、同じ週に男子ツアーで、翌週には女子ツアーでも、多くのダンロップ契約プロたちが同シリーズの『ZX7 Mk II』や『ZX5 Mk II』のドライバーの使用を開始。中でも、国内女子ツアーは、使用が解禁となった週から、尾関 彩美悠、山下 美夢有、勝 みなみ、小祝 さくらと4週連続で愛用するプロが優勝を飾った。
 日米のトッププロたちが厚い信頼を寄せる「スリクソン ZX Mk IIシリーズ」(以下、ZX Mk II)のドライバー。その開発はどんなコンセプトでスタートしたのか。
「私たち開発チームの感覚では、前作のZXシリーズはPGAツアーで使用するプロの人数やプロの勝利数といった点で、ようやく他社の競合モデルに追いついたというイメージでした。そのため次に開発するのは、競合品に〝勝てるモデル〟でなければならないという意識がありました。PGAのプロに関しては、クラブ契約がフリーのプロが〝スリクソンのドライバーを使いたい〟と言ってくれるようなクラブにしようと」
 と、「ZX Mk II」の開発メンバーの一人である中村 崇は語る。
 では、ターゲットをPGAツアーのプロに据えた開発陣は、具体的にはどんなドライバーをめざしたのだろう。
「前作でも意識したことですが、やはり飛距離で勝てないと勝負になりません。フィーリングや操作性はチューニングで何とかなるので、まずは飛距離で勝とうと考えました。そのため、ボールスピード(初速)を最も重視したのですが、データ上だけでなく、プロが実際に打って飛ぶクラブをめざしました。ここは非常に重要なポイントです」(中村)
 中村によれば、マシンテストでの性能や実測値が最も高いモデルを実際にプロが打っても、それが必ずしもいちばん飛ぶとは限らないため、そこが最大の悩みどころだった。そこで中村たちは、試作品ができるたびにプロたちに試打を依頼し、その結果やプロの声を開発にフィードバックしながら、「プロにとって、本当に飛ばせるドライバー」を追求していった。
 先述したように、飛距離を出すにはボール初速を高めることが不可欠である。それも実測で高い初速が出ていることが重要であり、トラックマン(弾道計測器)による計測値で、PGAのプロたちのスイングスピードで175マイル/時(約78.2m/秒)を超えることを目標に開発を進めた。
 そんな中で、「ZX Mk II」のボール初速を高めるためのキーテクノロジーとなったのが、前作で誕生した「リバウンドフレーム」(以下、RF)である。
「前作の開発過程では、ヘッドに、インパクト時の〝ひずみ〟がわかるゲージをたくさんつけて実験しました。その結果、フェースのセンターをやわらかくして、その周辺は硬く、さらにその周辺をもっとやわらかくと、剛性の異なる層を組み合わせていくと、ヘッド全体がたわんで、フェースセンターもいちばんたわむことがわかりました。つまり、フェースのたわみが大きいほど、ボール初速が出ることがわかったので、それを構造として実現したのが初代RFでした。そこでZX Mk IIでは、さらにフェースをたわませるための方法を探りました」(中村)
 フェースのたわみをより大きくするために、中村たち開発陣が着目したのがフェースとクラウンの境界部分だった。
 すでに述べたように、ヘッド全体のたわみが大きくなれば、その分だけフェースのたわみも大きくできる。
「ただし、フェースとクラウンの境界が角ばっていると、そこを起点にフェースだけがたわんでしまい、変形がボディまで及ばないのがこれまでの最大の問題でした。そこで今回、境界部分を丸く、厚くすることで起点をなくし、フェースセンターを広く、深くたわませることができました。これまで変形していたところで変形させない、というのが、今回私たちがこだわったことの一つです」(中村)

中村 崇(なかむら・たかし)
住友ゴム工業㈱スポーツ事業本部 商品開発部 クラブ技術グループ 課長

2002年入社。タイヤの開発を経て、2005年よりゴルフクラブ開発に従事。スリクソンのアイアンの開発、ゼクシオに関わるスイング解析などを担当したのち、2019年からスリクソンのドライバー、フェアウェイウッドの開発を担当。2022年4月より現職となり、スリクソンのクラブ全体の開発を統括する。

 同時に開発陣は、クラウン自体のたわみを大きくすることもめざした。その実現のために、前作ではカーボンを採用したクラウンの素材に着目した。
「チタンとカーボンのコンポジット構造だった前作では、クラウンに接合部を設ける必要があり、その接着シロがどうしても厚くなっていました。その厚みが、クラウンがたわむのを邪魔していることから、それならば、クラウンをチタンに変えてフルチタンにしたらどうだろうと」(中村)
 そこで、開発のごく初期の段階で、前作のクラウンをチタンに変えただけの試作品を作り、松山プロに打ってもらった。
「すると、松山プロが『全然手ごたえが違う』と。フルチタンのほうがインパクトで押せる感じがあって、すごく初速が出る、という話になったのです。開発チームとしてはすごく手ごたえを感じましたね」(中村)
 そのテストの結果を受け、〝クラウンをチタンに変えれば絶対にもっとボール初速が出る〟という確信がチーム内に生まれ、松山プロが口にした〝押せる〟という感覚も、クラウンをチタンに変えたことが要因だろうという結論に達した。
「〝今度のスリクソンのドライバーは明らかにボールスピードが違う〟というレベルまで持っていかないと、プロは〝それなら打ってみよう〟と思ってくれません。それにはやはりフルチタンでなければというのが私たちの結論でした」(中村)
 こうしてフルチタン構造を採用することで、クラウン、フェースセンターともにしっかりたわむRFの最新バージョンが生まれた。
 中村たち開発陣は、最新のRFを搭載した「ZX Mk IIドライバー」を、ダンロップ契約の日本人男子プロたちに試打してもらった。すると、選手によっては秒速で2m近くボール初速がアップしたという。
「1m違うだけでも、視界から消えていくスピードは明らかに速くなります。それが2倍近くになったので、ツアープロたちが目を見開いて『今回、何をやったんですか?』『どこを変えたんですか?』と驚いていました。あれは掛け値なしで、明らかにボール初速の違いを感じてくれたのだと思います」(中村)
 冒頭で触れたPGAツアー開幕戦は、実は「ZX Mk II」のドライバーがR&Aのリストに登録され、競技での使用が可能になった初めての試合で、中村はトーナメント会場でプロたちがテストするのを見守った。
「PGAのプロたちも、打った瞬間に明らかに初速の違いを感じたようで、〝調整してでも使ってみようかな〟という雰囲気がありました」(中村)
 松山プロも「ZX Mk IIドライバー」の初速の違いを感じ取った。松山プロはPGAツアーのサイトに表示される各ショットのボール初速を、ダンロップのツアープロ担当者とともにチェック。すると、通常はマイルで時速170台前半の初速が、この試合では平均で2~3マイル上がり、中には178マイル/時(約79.6m/秒)というショットもあった。かつてない初速の伸びを確認して、松山プロは「飛んでるね」と満足する表情を見せたという。

 今回のモデルチェンジで新たにラインアップされたのが、今シーズン、松山プロが愛用している「ZX5 Mk II LS(ロースピン)」ドライバーだ。投影面積が大きく、やさしさと飛距離を両立させた「ZX5 Mk II」と同じヘッド形状ながら、スピン量を抑えたこのモデルもまた、スリクソンのドライバーをPGAプロに使用してもらうことをめざして開発された。
「前作のZX7が、ある程度ヘッドを返しながら打つ人向けであったのに対し、ZX5はどちらかというとフェースをストレートに振る人向けに作っていました。ただ、最近のプロは後者のタイプが増えていて、フェースローテーションを使わずに打ち、〝これだとスピンが入りすぎる〟というプロにはロースピンモデルが必要だと考えました。特にPGAツアーでは、ロースピンフェードという球筋が流行しています。『ZX Mk II』のドライバーは、当社の契約プロだけでなく、すべてのプロのドライバーを替えてやるぞという意気込みで開発を進めていたので、〝フェードだけど距離も出る〟というPGAのトレンドについていくために、フェードが打ちやすくて、かつスピンが入らない『ZX5 Mk II LS』を用意しました」(中村)
 PGAプロに使ってもらうために開発した同モデルは、一般にも発売される。その理由について、今回の商品企画を担当した大倉 侑樹は次のように話す。
「同様のロースピンモデルは競合他社も発売していて、私たちが調査した結果、間違いなくニーズ、市場があると確信が持てたので、今回、満を持して発売することにしました。アマチュアでも、ヘッドスピードの速い人やスピンが多くて吹け上がって困っている人はいるはずで、〝顔はZX5がいいけれどスピンが入り過ぎる〟というゴルファーには『ZX5 Mk II LS』は魅力的なモデルだと思います」
「ZX5 Mk II LS」で注目したいのは、飛距離と方向安定性の高さだ。今回、ドライバーのヘッドスピードが43m/秒のアマチュアを対象に行った実打テストでは、「ZX5 Mk II LS」の打球は他社品にくらべ距離が出るだけでなく、左右のズレが小さくなっている。
「たんに重心だけ浅くすればスピン量は減るのですが、それだけではボールの捕まりが悪くなってしまいます。既存のロースピンモデルは、スピン量は少ないものの右に飛び出すために飛距離が出ないという、アマチュアにとっては難しいクラブと言えます。それに対し、『ZX5 Mk II LS』は、ヘッド形状や重心設計を工夫してきっちり作り込むことで、アマチュアでも、しっかり捕まってスピンの少ない球が打てるのが特長です」(大倉)
 工夫をこらしたという重心設計については、前作のチタン+カーボンのコンポジット構造からフルチタン構造に変更したことも関係している。
「クラウンをカーボンからチタンに変えても、軽量化や重心設計はきっちりやろうと。具体的には、チタンにすることでカーボンより薄肉化できるので、これまでよりクラウンを薄くしました。それに加え、クラウンに『スターフレーム』という、幅5㎜ぐらいのハリを網の目状に入れました。それによってクラウンを軽量化し、そこで生じた重量を他に最適に配分しています」(中村)
 この重心設計は「ZX7 Mk II」でも採用していて、ドライバーのヘッドスピード46m/秒のアマチュアによる実打テストでは、リバウンドフレームの効果もあり、前作にくらべ実に8ヤードもの飛距離アップに成功している。

大倉 侑樹(おおくら・ゆうき)
住友ゴム工業㈱スポーツ事業本部 ゴルフビジネス部 ゴルフクラブビジネスグループ 課長代理

2010年入社。物流部でのボール需給や工場の生産管理、販売会社に出向してのボール販売企画、営業を経て、2021年より現職。『スリクソン ZX Mk IIシリーズ』は、自身が商品企画を担当した初のモデルとなる。

 ドライバーをはじめとする「ZX Mk II」に標準装着される専用設計シャフトについても触れておこう。前作の「Diamana ZX50」を改良した『Diamana ZX-II』がそれだ。
「シャフト全体の安定感が増したイメージです。前作との違いで言うと、手元と、真ん中よりやや先の先中部の剛性を高くすることで、走りやすさと安定感を両立させました。しっかりしているけれど、適度に捕まって、安定感のあるフィーリングで打てるシャフトに仕上がっています」(大倉)
 前作のモデルは、少しやわらかめで、どちらかと言うとスインガー向けであり、上級者モデルにしてはやや物足りないでは、という声もあった。今回の変更はそうした意見も踏まえて行われた。
「しっかりと振りたい人に向けたシャフトの方がいいだろうということで、先中部を硬く、しっかりさせました。手元も硬くしているので、思い切って振りにいけますが、先の剛性は逆に下げているので、ヘッドが走るような印象を持ってもらえると思います」(中村)
 このように、随所に最新の技術を取り入れ、かつてないボール初速と飛距離を実現した「ZX Mk II」。その開発はいたって順調に進んだように思えるが、苦心した点はないのだろうか。
 それについて中村は「苦心したという表現が適当かどうかわかりませんが」と前置きした上でこう話す。
「とにかくプロにはたくさんテストしてもらいました。日本のプロたちには当社のゴルフ科学センターに何度も来てもらいましたし、ダンロップフェニックストーナメントの会場でも試打してもらいました。その意味では、歴代モデルの中でも、プロからのフィードバックを最も多く得たモデルだと思っています。それは松山プロをはじめとするPGAプロも同じ。プロの声を試作品に落とし込んで、またプロの声を聞いてということを何度も繰り返しました。開発をラボの中だけでは済まさない、というのが、今回私がいちばんこだわった部分です」
 ツアープロたちの実戦での使用開始からおよそ2か月を経て、いよいよ発売を開始する「スリクソンZX Mk IIシリーズ」のドライバー。最後に、発売を心待ちにしている一般ゴルファーに向けたメッセージをお願いした。
「今回のアマチュアの実打テストには、実は私もテスターとして参加しました。私はヘッドスピードが50m/秒近くあり、非常にスピンが多いタイプなのですが、『ZX5 Mk II LS』はスピンが抑えられていて、前作とくらべて明らかに飛んでいるのがわかりました。『ZX7 Mk II』も、やはり初速の違いを感じましたし、ボールも捕まるので距離が出ます。『ZX Mk IIシリーズ』は本当に自信を持っておすすめできるドライバーです」(大倉)
「今回、プロの意見にしっかりと向き合ったことで、フィードバックの重要性をつくづく感じましたし、『ZX Mk IIシリーズ』は、そうした意見を取り入れて作り上げたという実感があります。素材や外観に派手さはないかもしれませんが、打って出る球は本当に派手です。一発打っただけでも、明らかに進化したことが感じとれるものになっていますので、実際に打っていただいて、〝スリクソンのドライバーには、こんなに伸びシロがあったのか!〟と感じてもらいたいですね」(中村)

◆『スリクソン ZX Mk II ドライバー』の詳細はこちらをご覧ください。



◆《スリクソン ZX Mk IIシリーズ 誕生STORY② ウッド&ユーティリティ編》はこちら。

◆《スリクソン ZX Mk IIシリーズ 誕生STORY③ アイアン編》はこちら。